日本にて １９６６年５月３日、第3回日本グランプリが新装“富士スピードウェイ”で開催された。 プリンスは前、64年の第2回日本グランプリで苦杯を舐めさせられポルシエに対抗して、オリジナルのプロトタイプ"プリンスR380"を開発し、必勝体勢でエントリーした。 そこへ滝レーシングチームが、64年の再来ともいえる最新鋭の“ポルシェカレラ６”を持ち込んできた。排気量は同じ2000cc。 速さの"生沢"、地力の"砂子"、二人のエースドライバーを抱えるプリンスは勝つために、生沢がポルシェを徹底マークし、砂子が逃げる作戦を取ってきた。 速いドライバーはなんでもできる、そう言う意味で、生沢はチームオーダーをのんだ。 スタートから砂子はスパートし、滝のポルシェが追う展開となった。中に入った生沢は接触する事なく巧みにブロックする、焦った滝のポルシェはスピン、クラッシュで消えた。

作戦通り、砂子義一とプリンスR380が優勝。ポルシェがスピンした段階で生沢の仕事は終わっていた。その後は、まるで魂が抜けたようにリタイヤしてしまった。

レース後、生沢はプリンスを退社、かねてから夢だったイギリスＦ３レースに単身で挑戦した。 しかし、いきなりデビューと云う甘い話はなく、イギリスの「ジム・ラッセル・レーシング・スクール」で認められる事から始めなければならなかった。 翌1967年、生沢は日本のスポンサー資金で、イギリスでのレース活動をしていた。 この年の5月3日「第４回日本グランプリ」出場は、さらなるスポンサー獲得の為にも必修科目だった。 出るだけではダメだ、良い成績でゴールしなければ（今以上のスポンサーを獲得しなければ）、勇躍挑んだイギリスから撤退する羽目になるからだ。 そして、グランプリ当日、クールな生沢の目の色が変わった。 マシンは、1966年世界マニファクチャラーズ選手権（２０００ｃｃクラス）のチャンプマシン“ポルシェカレラ６”。前年の敵に自分が載っている訳だ。 公式予選で生沢はそれまで誰もなし得なかった"２分"の壁を破り、ただ１人"１分５９秒４３"でダントツのポールポジション。２位の酒井"２分２秒３０"。 レースは、プリンスからニッサンに名前が変わった「ニッサンＲ３８０II」の高橋国光、北野　元、大石秀夫、砂子義一の4台を相手に首位を譲らなかった。序盤戦、追いついてきた"高橋国光"のニッサンＲ３８０II」とテールトゥノーズとなった。１８周目、富士名物の30度バンクを抜けてグランドスタンドから見えるピット裏のＳ字コーナーに入る時、生沢が痛恨のシフトミス！！ 接近していた国光を巻き込んで２台ともスピンしダートへ飛び出した。互いにマシンは無傷だ、3位以下の酒井とニッサン勢が迫ってくる、ここで生沢のポルシエは素早くエンジンスタート、対する高橋は、エンジンがかからない。

生沢は素早くピットイン、車体のチエックを済ますとピットアウトした。首位にたった酒井のポルシエを猛追する。45周目、大観衆が見守る中、生沢が酒井を捕らえた、首位奪回だ。このまま逃げ切る。生沢は勝利を60％確信した。46周目、再び追い上げてきた酒井が第一コーナー後の30度バンクでそのままコースを飛び出してクラッシュ。幸い酒井は軽傷で済んだが。 こうなると、追ってくるのは前半にスピンに巻き込んだ国光R380IIのみだ。生沢の確信が100％になったのは“ポルシェカレラ６”がトップでゴールインした瞬間だ。 18周目のスピンの後、耐久のポルシエの実績が、素早くエンジンスタートさせたのか、単なる偶然なのか、理由は全くわからない。しかし、時間にして2〜3秒の差が、結果として、グランプリと云う檜舞台で"プライベーターがワークスを破る"という、奇跡を産んだ。 この日本グランプリは生沢徹がレース界のスーパースターとして、日本から世界へ大きくはばたく、強力なステップとなった。

右が、生沢徹1967年イギリスF-3のリザルトだ。 歓喜の67年日本グランプリ以降から生沢は本格参戦。すでに13戦終わった第14戦、ブランズハッチからF-1を目指した生沢の闘いがはじまった。 第１４戦、１５戦は小手調べ、7月２日のブランズハッチでいきなり3位表彰台だ。同時にファステストラップも記録。ここから日本の生沢パワーが炸裂する。 翌週7月9日、場所は同じブランズハッチでF３初優勝、ポールトゥウイン+ファステストラップの完全優勝だ。だが、初優勝の喜びを味わう間もなく、次のスポーツカーレースに、日本から持ってきたホンダS800でエントリーしていたため、すぐスタート。コブラやスペシャルMG-B、ジャガーEタイプなど大排気量マシンを相手に総合3位、クラスではダントツ優勝。それじゃぁと、当日の最終レースフォーミュラー・リブレにF3のブラバムBT41で急遽エントリー。こつちはロータス40、マクラーレンなど、クラスの違うフオーミュラーとの混合レースだ。化け物マシンばかりだがレースはトータルバランスがモノをいう。5周目にトップにたち、ファステスもマークして、前に一台もいないままチェッカー。つまり総合優勝だ。一日3勝。賞品の山に嬉しい悲鳴だ。

9月末から10月始めに2連続2位入賞。ブランズハッチ・マイスターの称号をもらう程に地元では人気者となった。トラブルがない限り表彰台の常連となって、シーズン終了だ。 最終順位は9位、26ポイント。優勝3回、2位2回、3位２回。シーズン最初から参戦していたら楽々チャンピオンだ。来年こそはフル参戦で、次はF2。 <文中敬称略で使用させていただきました。＞

1967 II Les Leston Championship British F3 Championship Pl Driver Car Total 1 Harry Stiller Brabham BT21 - Ford/Lucas 95 2 John Miles Lotus 41 - Ford/Holbay 71 3 Tony Lanfranchi Merlyn Mk 10 - Ford/Holbay 63 4 Alan Rollinson --- 60 5 Morris Nunn Lotus 41 - Ford/Holbay 46 6 Peter Gaydon Brabham BT18 - Ford/Cosworth 45 7 Derek Bell Brabham BT21 - Ford/Cosworth 30 8 Chris Williams ------- 28 9 Tetsu Ikuzawa Brabham BT21 - Ford/Holbay 26 10 Mike Keens Brabham BT21 - Ford 25

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3rd" 展"

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